肝がんについて知る

肝臓とは

 肝臓は腹部の右上にあり、成人で800〜1,200gと体内最大の臓器です。

肝臓の主な役割は、①食事から吸収した栄養分を取り込んで体に必要な成分に変えることや、②体内でつくられた有害物質や体外から摂取された有害物質を解毒し、排出することです。また、③脂肪の消化を助ける消化液である胆汁を作っています。胆汁は、胆管を通して消化管(十二指腸)に送られます。このように肝臓はとても重要な働きをしており、肝臓が元気でないと生命を維持することはできません。これはおなかの中のその他の臓器との大きな違いです。

肝細胞がんとは

  「肝細胞がん」は、肝細胞ががん化して悪性腫瘍になったものです。同じ肝臓にできたがんでも、胆汁が通る胆管細胞ががん化したものは「肝内胆管がん」と呼ばれています。肝細胞がんと肝内胆管がんは、性質が異なることから区別されています。頻度は肝細胞がんが90%以上、肝内胆管がんは数%と稀です。

 ここでは、肝細胞がんについて解説します。なお、一般的には「肝がん」というと「肝細胞がん」のことを指します。

転移性肝がんについて

 肝臓にできる肝細胞がん、肝内胆管がんは原発性肝がんと呼ばれます。それに対し、肝臓以外の臓器にできたがんが肝臓に転移してきたものを転移性肝がんといいます。治療は転移をする前の部位(例えば大腸がんや胃がん、膵臓がんなど)に準じて行います。

発生要因

 肝細胞がんの発生する主な要因は、B型肝炎ウイルスあるいはC型肝炎ウイルスの持続感染(長期間、体内にウイルスがとどまる感染)などによる肝臓へのダメージです。肝炎ウイルスが体内にとどまることによって、肝細胞の炎症と再生が長期にわたって繰り返され、それに伴い遺伝子の突然変異が積み重なりがんになると考えられています。

 ウイルス感染以外の要因としては、飲酒、肥満(脂肪肝)などが知られています。

 肝臓にダメージを与える原因は、2018年のデータでは、沖縄県以外①C型肝炎(48.2%)、②アルコール(19.9%)、③B型肝炎(11.5%)、④脂肪肝(6.3%)で、沖縄県①アルコール(51.9%)、②脂肪肝(13.3%)、③C型肝炎(11.8%)、④B型肝炎(3.5%)です。

 沖縄県ではアルコールや脂肪肝が原因で肝細胞がんが発生する頻度が他県に比べ多いという特徴があります。

肝細胞がんの症状

 肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、炎症やがんがあっても初期はもとより進行しても自覚症状がほとんどでないことが多いです。医療機関での定期的な検診や、ほかの病気の検査のときなどに、たまたま肝細胞がんが発見されることも少なくありません。健康診断などで肝機能の異常や肝炎ウイルスの感染などを指摘された際には、医療機関を受診するようにしましょう。

肝細胞がんの病期(ステージ)


肝細胞がんの病期(ステージ)は、がんの大きさ、個数、血管浸潤やほかの臓器への転移の有無で下記のようになります。

肝細胞がんは、比較的肝臓内にとどまりやすいですが、できやすくなった肝臓(ダメージをうけた肝臓)に発生してくるため、肝臓内で多発する傾向があることが特徴です。

出典:日本肝癌研究会編.臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 第6版補訂版.2019年,金原出版,P26-27.より作成

肝細胞がんの検査

 肝細胞がんの診断は、基本的に画像診断となります。画像診断にはそれぞれ得意、不得意があり、超音波(エコー)検査や、CT検査、MRI検査の画像検査と、腫瘍マーカー検査(血液検査)などを組み合わせて診断を行います。また、治療方針の決定のためには、血液検査等で肝臓の予備能力を調べていきます。

超音波(エコー)検査

 体の表面にあてた器具から超音波を出し、臓器で反射した超音波の様子を画像化して観察する検査です。がんの大きさや個数、がんと血管の位置、がんの広がり、肝臓の形や状態、腹水の有無を調べます。ただし、がんの場所によっては、検査が困難な場合や、皮下脂肪が厚い場合は、十分な検査ができないことがあります。

肝細胞がんの検出率や正診率を上げるため、血管から造影剤を注射して検査を行うこともあります(造影超音波検査)。

CT検査

 CT検査では、X線を使って体の内部を描き出し、腫瘍の性質や分布、転移や周囲の臓器への広がりを調べます。肝細胞がんの検出率や正診率を上げるため、造影剤を用いながら時間をずらして何度か撮影をするダイナミック造影CT検査を行います。

MRI検査

 MRI検査は、磁気を使った検査です。肝細胞がんの検出率や正診率を上げるため通常CT検査と組み合わせて、造影剤を用いたMRI検査を行います。

腫瘍マーカー検査

 腫瘍マーカーとは、体のどこかにがんが潜んでいると異常を示す血液検査の項目で、がんの種類に応じて多くの種類があります。
 肝細胞がんの腫瘍マーカーは、AFP(アルファ・フェトプロテイン)やPIVKA-Ⅱ(ピブカ・ツー)、AFP-L3分画(AFPレクチン分画)であり、保険適用となっています。

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