沖縄内には当院を含めて3カ所の救命救急センターが整備されています。救命救急センターとは心停止や重症外傷、急性中毒、急性呼吸不全、急性循環不全といった生命に関わる重篤な病態の患者さんに対して、初期診療や手術などの決定的治療、集中治療を行う高度な機能を有する医療施設を指します。当院は、ドクターカーやドクターヘリの運航も担っており、近隣のみならず沖縄本島や周辺離島の重症患者の受入を行っています。さらに新病院では、ヘリの離発着も可能となり、県内全域から重症患者の迅速な受入が可能となります。
現在、救急集中治療部はスタッフ医師13名、後期レジデント6名、専属救命士6名で構成するチームです。救急科専門医10名、集中治療専門医2名、総合内科専門医1名、脳神経外科専門医1名、外科専門医1名、小児科専門医1名が在籍し様々なバックグランドを持つ医師が集まっています。我々のモットーは、病院前の早期から患者へ介入し、集中治療室を退室するまでシームレスな高い質の医療を提供することによる患者予後改善です。そして緊急度が高い疾患は他科連携が非常に重要で予後に直結する為、救急医がハブとなり、適切なタイミングで医療介入ができる様にコマンドしています。例えば、「院外目撃ありで致死的不整脈を起こした患者に対しては病院前から介入し院内救急医と循環器内科医とタイアップしてECMOによる補助循環を確立した上で脳保護と心臓への治療介入」を行います。また多発外傷では外科医や放射線科医などのオペレーターと、麻酔科・オペ室とのコラボレーションが必須で当院ではチームを作り日々システム改善を試みています。
もう一つ大きな役割は、教育です。我々はE R、集中治療、総合診療を行っていく上でそれぞれ各専門科に通じる高度な専門知識とスキルを要するジェネラリスト集団でいる必要があります。その質を維持することで初期研修医から専門科医師まで沖縄県内だけでなく全国から「高い質の教育」を求めて多くの医師が研修に来ていただいています。
平成17年より通称「てぃ〜だヘリ」で愛されている沖縄県ドクターヘリ、平成24年よりラピッドレスポンス式のドクターカーを運行しています。医師を現場投入し受け入れ医療機関と連携することで緊急度が高い重症患者の早期治療介入を実現させています。沖縄県、そして地域医療を守る重要な役割を担っており、今後も行政や消防と連携し地域に密着した活動を目指していきます。
当院救急外来は24時間365日、三次救命救急センターとしての重症患者の救急搬送を受け入れています。沖縄県内3施設ある救命救急センターの内の1つであり、浦添市を中心に宜野湾市や那覇市の重症患者治療の最後の砦として重要拠点となっています。また、疾患の重症度に関わらず、診療を希望する患者さんに対応すべく、24時間365日体制で救急診療を行っています。救急外来ではトリアージと呼ばれる、患者さんの緊急度、重症度の振り分けを行い、緊急性の高い患者さんの診療が遅れることのないように、医師、看護師、救急救命士によって地域の救急診療を支えております。
2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | |
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救急車搬送数 | 5041 | 5025 | 5074 | 5357 | 4524 |
救急隊からの多様化する情報を専門診療科と早期に共有し、現場出動したヘリやカーの医師からの情報に基づき早期の方針検討を行います。救急初療で必要な検査などを迅速に行い、その後手術・カテーテル治療・内視鏡などを行います。また、日頃から専門診療科との合同カンファレンスを開くことで円滑な連携体制を心がけています。
専門医チームが専従し管理するhigh intensity型I C Uである重症コロナ病棟と、通常ICU病棟、救命救急センター病棟において重症患者管理を行なっています。当院の特徴として集中治療体制が充実していることから、沖縄県全域から重症患者の紹介を受け入れ、また各専門診療科の重症患者を臓器保護と全身管理の専門家である我々が併診し予後改善に力を入れています。また積極的に全国の施設とも連携し勉強会や学術・研究活動も行なっています。
■集中治療の指揮者として
救急集中治療部には、重症患者管理を行う集中治療医が多数在籍しています。集中治療医は、全身を管理するジェネラリストかつ、高い専門知識を要するスペシャリストであり、オーケストラでいう指揮者に例えられることがあります。指揮者はどの楽器にも精通し、専門的な感性と知識を備え楽曲全体の構成をまとめる専門家です。集中治療医も同様で、チームのリーダーとして各専門診療科や各専門職種の特色を熟知し適材適所で介入をしてもらうマネージメントを行います。それによってどんな重症患者でもしっかりと改善し、家に帰れるようにすることを目標としています。
■コロナパンデミックの中で
当院はこの10年、重症呼吸不全や重症心疾患、重症感染症に力を入れて活動を行って来ました。これらを学びたい若手医師は県内だけでなく全国から集まり当院の集中治療研修を受けています。災害ともいうべきコロナパンデミックで有名になった「ECMO」や人工呼吸管理は当院が得意とすることもあり、県内の人工呼吸管理を要する重症コロナ肺炎を100人以上受け入れ治療に当たることが出来ました。全国でもここまでの件数を診療に当たることは珍しく、この知識と経験は学術集会等でも共有させていただきました。
■チーム医療で患者さんと向き合う
当院の集中治療には多職種のチーム力が欠かせません。重症患者を病院間で搬送する専門チームを擁しており、また病棟では毎日の様に診療に携わる看護師や薬剤師、栄養士、理学療法士、言語聴覚士、臨床工学技士らで多職種チーム回診を行い、専門的介入をしています。
氏名 | 卒業年 | 専門分野 | 学会専門医・他 |
米盛 輝武 救命救急センター長 救急集中治療部部長 災害救急情報管理室室長 |
1997年 | 救急医療 脳神経外科 病院前救急診療 災害医療 |
日本救急医学会 救急科専門医 日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医 日本航空医療学会 航空医療医師指導者、評議員 日本DMAT隊員統括DMAT資格 ICD協議会認定インフェクションコントロールドクター 日本救急医学会九州地方会評議員 JPTEC九州 沖縄県幹事/世話人 沖縄県災害医療コーディネーター 沖縄県南部地区MC協議会副会長 沖縄県警察MC協議会副会長 沖縄県IMATコーディネーター |
那須 道高
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2004年 | 集中治療 救急医療 総合診療 プライマリケア 臓器提供 |
日本救急医学会 救急科専門医 日本集中治療医学会 集中治療専門医 日本内科学会 総合内科専門医 日本プライマリ・ケア連合学会 プライマリケア認定・指導医 総合診療専門研修 特任指導医 日本DMAT隊員 日本集中治療医学会 集中治療を要する重症患者の広域搬送ガイドライン作成委員会委員 NPO法人 ECMOnet 沖縄県コーディネーター/協力員 |
岩永 航 救急集中治療部副部長 |
2009年 | 集中治療 救急医療 重症呼吸不全 ECMO蘇生 臓器提供 |
日本救急医学会 救急科専門医 日本集中治療医学会 集中治療専門医 日本航空医療学会 航空医療医師指導者 ARDS診療ガイドライン2021 作成委員 日本救急医学会 ECMOネットワーク特別委員会委員 日本救急医学会 脳死・臓器組織移植に関する委員会 日本集中治療医学会 評議員 ICD協議会認定インフェクションコントロールドクター 日本DMAT隊員 NPO法人 ECMOnet 協力員 |
窪田 圭志 救急集中治療部医長 |
2010年 | 救急医療 小児救急 集中治療 外傷 |
日本救急医学会 救急科専門医 日本小児科学会 小児科専門医 日本DMAT隊員 |
髙橋 公子 救急集中治療部副医長 |
2012年 | 救急医療 | 日本救急医学会 救急科専門医 日本内科学会 認定医 ICLSコースインストラクター |
鈴木 祥子 | 2013年 | 救急医療 | |
谷口 大介 | 2014年 | 救急医療 | 日本救急医学会 救急科専門医 ICLSインストラクター・コースディレクター |
中泉 貴之 | 2015年 | 救急医療 集中治療 緩和医療 |
日本内科学会 認定医 |
田中 庸介 | 2016年 | 救急医療 | 日本救急医学会 救急科専門医 麻酔科標榜医 |
野波 啓樹 | 2017年 | 内科 | 日本専門医機構 内科専門医 |
森川 咲 | 2017年 | 救急医療 | |
金城 朋弥 |
2019年 | 救急医療 | |
菅井 七海 | 2019年 | 救急医療 |