肝がんの治療

治療の選択

肝細胞がんの治療には①手術、②局所穿刺療法、③肝動脈化学塞栓療法(TACE)、④薬物治療(分子標的薬)などがあります。一般的に手術、局所穿刺療法が肝細胞がんを治す治療であり、それらが行えない場合にがんを抑える治療として肝動脈化学塞栓療法や分子標的薬による薬物治療が適応となります。肝細胞がんの治療は、最終的にがんの状態(病期)と肝臓の予備能力(肝障害度、Child-pugh分類、下記)により決定されます。(肝がん治療アルゴリズム、下記)。

肝障害度
出典:日本肝癌研究会編.臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 第6版補訂版.2019年,金原出版,P15.より作成
Child-pugh分類
出典:日本肝癌研究会編.臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 第6版補訂版.2019年,金原出版,P15.より作成
肝がん治療アルゴリズム
出典:日本肝臓学会 編「肝癌診療ガイドライン2021年版」2021年,P76,金原出版

手術(外科治療)

手術は肝細胞がんを治すとても有効かつ確実な治療です。しかし、肝臓は、元気な肝臓でも切除できる量が決まっており、さらにダメージをうけた障害肝では切除できる肝臓の量はさらに制限されるため、慎重に手術可能かを判断していきます。肝臓のダメージが少ない(Child-Pugh分類がAまたはB)ことが必須条件であり、さらに精密検査で切除可能な肝臓の量を算出し、許容される場合手術の適応となります。肝臓のダメージが強い(Child-Pugh分類C、非代償性肝硬変)場合、がんの条件が合致する場合、ドナーの問題はありますが肝移植が適応となることがあります。

肝切除

がんとその周囲の肝臓の組織を手術によって取り除く治療です。
がんが肝臓にとどまっており、多くはがんが3個以下の場合に行います。がんの大きさには特に制限はなく、10cmを超えるような巨大なものであっても、肝切除でがんが取りきれる場合もあります。
切除の術式は、がんのある場所や肝機能に応じて、小さい範囲での切除から、複数の区域にわたる大きい範囲での切除までさまざまです。近年、低侵襲手術として腹腔鏡手術が肝切除でも行われるようになっており、解剖学的関係等でどうしても傷が大きくならざるを得ない肝切除のデメリットを解消しうる方法として飛躍的に発展してきております。当院でも、患者さんの早期術後回復をめざし腹腔鏡下肝切除を積極的に導入しております。

穿刺局所療法

体の外から針を刺し、局所的に治療を行う方法で、手術に比べて体への負担の少ないことが特徴です。Child-Pugh分類のAまたはBのうち、がんの大きさが3cm以下と比較的小さく、かつ、3個以下の場合に適応となります。穿刺局所療法には得意不得意な部位があり、最終的に肝細胞がんの部位などにより適応が決定されます。肝細胞がんの穿刺局所療法として現在推奨されているのは、ラジオ波焼灼療法(RFA)です。その他、従来からの穿刺局所療法として、経皮的エタノール注入(PEI)、経皮的マイクロ波凝固療法(PMCT)があります。

肝動脈化学塞栓療法(TACE)

X線画像で体の中を透かして見ながら肝臓の近くの血管へカテーテル(管)を入れて、標的となるがんの治療を行なう方法です。塞栓療法には、肝動脈化学塞栓療法(TACE)と肝動脈塞栓療法(TAE)があり、肝細胞がんでは抗がん剤を混ぜて投与するTACEが主流です。その他、カテーテルから抗がん剤のみを注入する肝動注化学療法(TAI)も選択される場合があります。

薬物療法

肝細胞がんの全身薬物療法では、分子標的薬による治療(分子標的治療)や免疫チェックポイント阻害薬による治療が標準治療です。肝切除や肝移植、穿刺局所療法、肝動脈化学塞栓療法(TACE)などの治療が行えない場合や無効、また他臓器転移のある肝細胞がんが適応となり、患者さんの活動性(パフォーマンスステータス)と肝臓の機能がともに良好なChild-Pugh分類Aの場合には、全身薬物療法を検討いたします。

その他の治療

全身薬物療法で用いる薬の種類

 肝細胞がんの放射線治療は、まだ研究結果の蓄積が十分ではなく、標準治療としては確立していません。しかし、局所療法が難しい場合や、局所療法後に再発した場合等には、放射線治療が行われることもあります。また、骨に転移したときの痛みの緩和や、脳への転移に対する治療、血管(門脈、静脈)に広がったがんに対する治療を目的に行われることがあります。

担当診療科と診療実績