膵臓がんについて知る

膵臓とは

 膵臓は胃の後ろにある長さ20cmほどの細長い臓器です。右側から頭部・体部・尾部の3つの部位に分けられ、頭部は十二指腸に囲まれています。膵臓には2つの役割があります。1つは消化液である膵液をつくること(外分泌機能)で、もう1つは血糖値を下げるインスリンなどホルモンをつくること(内分泌機能)です。膵液は膵管を通って運ばれ、主膵管という太い膵管に流れていきます。主膵管は頭部で副膵管と別れ、主膵管の出口は十二指腸の中ほどにある大十二指腸乳頭(ファーター乳頭)に、副膵管の出口は大十二指腸乳頭よりも少し口に近い小十二指腸乳頭にあります。主膵管は、肝臓から胆汁が運ばれる総胆管と合流します。食事が十二指腸に流れてくると、大十二指腸乳頭の出口を締めている筋肉(Oddi括約筋)が緩んで胆汁と膵液が十二指腸に流れていき,食事と混ざって消化が行われます。

膵臓がんについて

 膵癌は膵管の細胞(膵管上皮)から発生する膵管癌が最も多く、初期の段階では膵管上皮内に留まっている癌細胞が次第に膵管周囲に拡がっていきます。これを浸潤と言います。浸潤性膵管癌は「通常型膵癌」と呼ばれることもあります。浸潤性膵管癌の多くは、膵癌取扱い規約(日本膵臓学会編)による組織型分類では腺癌という型の癌ですが、腺扁平上皮癌、粘液癌、退形成癌など他の型もあります。その他、膵液を産生する細胞から発生する腺房細胞癌や膵管内乳頭粘液性腺癌粘液性嚢胞腺癌神経内分泌癌など多くの種類の癌があります。

原因

 喫煙や大量飲酒、肥満、糖尿病、慢性膵炎、家族歴、膵管内乳頭粘液性腫瘍Intraductal Papillary Mucinous Neoplasm(IPMN)などがリスク因子と言われています。

症状

 早期の段階では症状が出にくく、発見が難しい癌の代表とされています。進行してくると腹痛や背部痛、食欲不振、腹部膨満感、黄疸などが出てくることがあります。発生する部位によっては癌が膵管を閉塞して膵炎の原因になったり、糖尿病の発症あるいは悪化をきたしたりして発見のきっかけになることがあります。

診断

 リスク因子を伴う場合、血液検査(膵酵素、血糖、腫瘍マーカーなど)や腹部エコーで異常が疑われた場合には精密検査が行われます。腹部造影CT、MRI、超音波内視鏡検査Endoscopic Ultrasonography(EUS)、内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査Endoscopic Retrograde Cholangiopancreatography(ERCP)、内視鏡的経鼻膵管ドレナージEndoscopic Nasopancreatic Drainage (ENPD)を留置して行う連続膵液細胞診Serial Pancreatic juice Aspiration Cytological Examination(SPACE)などの検査があります。EUSは、内視鏡の先端に超音波装置がついている器械を使って胃や十二指腸の壁越しに膵臓を調べる検査です。ERCPは、側視鏡という特殊な内視鏡を口から入れて十二指腸乳頭を見ながら膵管に細いチューブ挿入し、造影剤を注入してレントゲン撮影を行う検査です。ENPDはERCPに続いて行われる処置で、膵管内に留置したチューブを鼻から引き出してボトルにつなぎ、膵液を排液できるようにする処置です。チューブから出てくる膵液を採取して膵液中に含まれる細胞を調べる検査(細胞診)を連続して行うのがSPACEです。細胞診はclass IからVの5段階で評価します。class Iは正常細胞、IIは異型細胞を認めるが悪性ではない、IIIはIIIaとIIIbに分け、IIIaは軽度・中等度異形性があり悪性を少し疑う、IIIbは高度異型性があり悪性をかなり疑う、IVは悪性の可能性が高い、Vは悪性と断定できる、となります。ただし、細胞診でclass Vが検出されなくても、血液検査や画像検査による総合的な診断で膵癌が強く疑われる状況であれば膵癌としての治療をお勧めしています。EUS-FNA (Fine Needle Aspiration)という、EUSで病変を見ながら針を刺して癌細胞を採取する方法もありますが、針を刺した通り道に癌細胞が移植されてしまったり、部位によっては癌細胞がお腹の中にばらまかれてしまったり(播種)するリスクがあるため、適応は慎重に選択する必要があります。さらに、遠隔転移が疑われる場合には、PET(Positron Emission Tomography)検査を行うことがあります。PET検査は、静脈からFDG(Fluorodeoxyglucose)という放射性フッ素を付加したブドウ糖を注射し、FDGの分布を画像化する検査です。 癌細胞は糖を多く取りこむためFDGが集積し、シンチグラフィー上で明るく光ったように見えます。

担当診療科と診療実績